LOGIN我が社のような取り組みは珍しいようで、マスコミ各社から取材を!と問い合わせを受けたが、試験の妨げになるのでお断りした。 マスコミが来ると分かったら女子社員が気合いを入れて化粧をするとか、そんなことに力を注いでほしくない。 時代錯誤のオッサンを含めて、試験が開始された。 試験監督は既に実力アリと私が認めている人間が行う。《あー、あー、試験監督に従うように。試験監督から試験の際の様子を逐一教えてもらうからそのように。》「あっ、そのPCは私の……」「私のなんだ?」「私が普段使っているものですー!」 他社のPCを使おうとしたとしてこの男は実力主義社会において最下層へと追いやられることとなった。「なんだ?これは?文字?」「試験中です。私語は慎んでください」「お前も社員だろ?何で試験受けてねーんだよ?」「社長の指示です」 あー、これは私が行くかぁ。「あのねぇ、そこの私語を止めなかったあなた?名前は?試験官が試験を受けていない理由?受けなくても私が予め実力アリと認めているからよ」「他の社員もわかったら自分の試験をこなすのね。間違っても私語なんて話さないように」 試験官に詰め寄った男も最下層行きね。 ちなみに文字なのかわからなかったやつはアラビア文字よ。読める人には読めるのよ。PCで書いたやつだからクセがなくて読みやすいはず。現地の人が書いたやつは本当に読めない。 試験結果をPCで分析。「やっぱり若年層の方がPCの問題の正答率も問題を解くのにかかった時間もいい点をだしているわね」 筆記試験の結果については正答を颯斗に渡してあるから、筆記試験の結果もPCにまとめてくれるだろう。「隠れ多言語習得者って結構いるもんね」「大学も第2外国語まで必修だったりしますからねぇ」「それにしても…年が上になっていくにしたがって英語すら危うくなってない?」「なんですよね。最近は英語表記じゃなくなってきてますよね?読める人が増えたからでしょうか?」「かもねぇ」 筆記の翻訳は英語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語・中国語(北京語)・アラビア語の8種類。 私は網羅してるんだけど。商談の時に英語だけよりもその国の言葉を話した時の方が印象がいい。英語でも通じるんだけど。 翻訳の問題にしたので、簡単な翻訳なんだけどできる人・できない
仕事を颯斗とするようになってから、書類の処理が格段に速くなった。定時帰宅もお手の物。というか、定時帰宅で颯斗が家事をする。なんなら私だけ残業してその間に颯斗が家事をこなす。「お二人で仕事をしていると生き生きしていますな。婚約者同士ですし、早く結婚して社長が家を守ってはどうでしょう?」「セクハラですよ?それに、最近では男性の方が家事をするという家庭も増えているようですし、その家のカタチというものではないでしょうか?他人が口を挟むような事ではないですよ~」 と、語尾は柔らかいけど、言ってることは「ごちゃごちゃとうちの事情に口を挟むんじゃねーよ」だと思う。「しかしまぁ、イマドキ女性は結婚してサッサと家に入ればいいみたいなのがいるんですね」「まさかうちの会社にいるとは思わなかったけど。‘セクハラ’って言葉がなかった時、どれだけ迷惑かけたんだろうな?あの男。早期退職願おうか?」 恐ろしい。颯斗に逆らってはいけない。「結婚後に私が会社に残るのは不満なんでしょうか?」「かもなぁ。本当に頭が固そうだから……」 早期退職をお願いします。「実力じゃなくて、年齢とともに昇給と役職が与えられた世代じゃないの?時代錯誤じゃない?私は完全に実力主義よ」 私自身、他カ国語を話すことが可能だし、プレゼン能力もそこそこ。 颯斗だって、この前のプレゼンは私よりも評価されたし。「あのオッサン、実力あるの?PCは使えるのよね?それは当然なんだけど」「……セクハラ発言後気になってオッサンの職場をちょっと覗いた。部下に文句とか苦情いうだけで、仕事してたかなぁ?って感じだった」 是非、早期退職を!「目上にはヘコヘコして、目下はぶっ潰すみたいなタイプ?」「そんな感じ。権力に弱いタイプだな。きっと金も好きだ。ついでに言うと酒とか?」「典型的部下に嫌われるタイプの人間じゃない!実力主義なら最下層よ?」「だよなぁ?」 だから是非、早期退職を! 今度は私が張り紙を出した。 『来週月曜日、各々の実力を図るために各PCにて実力を図る。同時に筆記の試験も行う故に来週月曜日には筆記用具持参で出社するように 神薙美咲 』「なんなのあの女!なんのつもりなの?女王様?」 社長です。この人は懲戒免職対象です。「颯斗の名前で張り紙を出せば苦情がなかったのかなぁ?」「それ
「出来たぞー!」「わーい!」 なんか匠から尻尾の幻覚が見える……。「なんかカレーも美味しそうね」「味見したけど、これはこれで美味かった」 お肉屋さん、本当にいい肉をくださったんじゃないかなぁ?いくらなんだろう?「肉ごとに下処理を変えたり、灰汁を取りまくったり、結構大変だった」「それはかなり大変だったんじゃ……」「美味いから何でもいい。美味いものは正義だ!」「たくさん作ったから、小分けにして冷凍しておく。そうすればカレーとしても食べれるけど、カレーうどんにしたりもできるし、いろいろ使い勝手がいいからね」「すいませ~ん、俺に1人前冷凍してやつ下さい」 うちはそれで商いをしているわけじゃないんだけどな。「帰る時に言ってくれよ。冷蔵庫にでも入れておくから」「匠はさぁ、何でそんなに食べるのに太らないの?」「「燃費が悪い体なんじゃないか?」」 結局そこに行きつくの?「いいわよ、燃費がいい体だもの。要は食べ過ぎなきゃいいのよ」「颯斗の美味い料理に抗って食べ過ぎずにいられるのか?」「っ、根性よ!」 なんか二人に呆れられたような気がするけど、気のせいだと思っておく。 プールでダイエットしてからちょっとは痩せて、それからもジムに通って筋トレをしようとしてる……んだけど、何故かトレーナーは颯斗なのよねぇ。 颯斗は筋肉にも詳しいのかしら?料理にいろんな肉の部位使うし。「体の内側の方にある筋肉を鍛えた方が効果があるからこのマシーンじゃ意味がない」とかズバッと言っちゃってるから、他の方も使わなくなってるのよね。使ってるのって、ボディビルをしてる方だけじゃないかな? 逆に私と颯斗で使ったマシーンは大人気。 他の方も使うようでなかなか使えなくなった。そこで颯斗が一言。「あの使い方じゃ、目的の筋肉は全く効いてないんだよなぁ」。 以来、私と颯斗がトレーニングをしている様を凝視する方が増えました。居心地が悪いので、そのジムに行くことを止めました。 なんて思ってたら、匠がおかわりを3杯はした。「おい、米がなくなるじゃねーか!」 流石颯斗です。米はなくなりました。匠によって。仕方ないので、自分だけカレーうどんを作っていました。「「美味しそう…」」 物欲しげに私と匠が見ていたそうです。仕方ないので、私と匠の分も少しずつ作ってくれました。「このカ
ピンポーン! と、元気な音が鳴り今日もやって来た。 曰く、「あの味が忘れられない!」と匠は毎週のようにやってくる。「颯斗!今日の夕飯は何?3人だし、ちょっと手抜きになっちゃうかなぁ?大量にカレーを作ろうかな?カレーならアレンジがきくし、時短料理にいいかも。その分を今回大量に作ろうかな?因みに肉は何派?」「豚!」by匠「鳥」by美咲「困った。俺は牛が好きなんだよなぁ。全種類の肉、入れてみる?」「それは食べたことない!」「私もー」「俺もない。物は試しっていうし、作ってみるか。さて、肉屋に行くんだが……美咲さん一緒に行きませんか?」「えー?俺は留守番?」「匠は身バレしたらマズいだろ?」 肉屋までプチデートなんだろうか?買い物だけど。「こんにちは!」「おお、これはまた輝くような美女が来店だよ」「店主、そんな事言ってると女将さんにどやされますよ?」「そりゃいけねぇ。こんな美女を侍らせて、兄ちゃん何を買うんだ?」「今日の夕飯にカレーを作ろうと思ったんだ」「ほうほう」「で、この彼女が鳥。俺は牛。もう一人うちで留守番してるやつは豚を所望してるんだよ。いっそのこと全種類入れてカレーを作ってしまおうかと…」「ほう、兄ちゃんなかなかチャレンジャーだね。出来た感想きかせくれよ!で、何を?」「鶏肉、豚肉、牛肉、それぞれを一口サイズでもらいたい。部位は問わないよ?」「水臭いなぁ、こんな美女が口にするんだから最上級の部位を用意するよ。ちょっと待ってな」「颯斗……私をいい肉を買うために連れ出したりするのはやめてくださいよ」「いやだなぁ。美咲さんとご近所お散歩デートしたかったのも事実ですよ?」 そう言われると正直に嬉しい。「へい、兄ちゃん待たせたな。お代は次にカレーの感想を聞いた時で構わない。キレイなお姉さんはまた来てくださいよ!」 いろんな種類の肉を混ぜたカレーは初めて。颯斗でも美味しく作れるのかな?「遅いよー。待ちくたびれた。お腹減った」「あのなぁ、まだ作り始めてねーし」「お肉屋さんでけっこう手間取ったのよ。匠も来れたらよかったんだけどね」 匠はうちに来るのも難しかったんじゃないかな?ここが完全オートロックだからできることだよね。「カレーが出来るまで、二人で待ってて!」「匠、颯斗のカレーを侮るんじゃないわよ?市販のルゥなんか使わ
合併後は『T・神薙インターナショナルコーポレーション』というダッサイ名前の会社になったが、颯斗が社長補佐という事で、仕事の話を家でしたりするようになった。「あの案件なんだけど、もっと踏み込んだ方がいいと思うのよね」「ああ、アレか。そうだなぁ?もっと深いところまで知らないことには俺らは手が出せないよな」「そうよね?やっぱ次の会議であの案件のリテイクを提案すべきね」「それより……せっかくなんで、夕飯を温かいうちに頂いてくれませんか?」「あ、ごめん。続きは食後に!」「食後は食器洗いが待ってるからゴメンなさい」 意外と家での話は難航する。 颯斗が家政婦を兼任している以上仕方ないのかなぁと思うけど、私が家事できないのがそもそもの原因だし。 会社では副社長ではなく社長と呼ばれるようになった。 あと、颯斗の火消しが功を奏したのか『神崎美咲ビッチ説』は消え去った。 颯斗は社長補佐として秘書室ではなく、社長室にいることになった。本当に四六時中一緒じゃないかなぁ?颯斗の方がちょっと早く帰宅してるけど(家事のため)、それ以外は一緒だもんねぇ。一応婚約者だし、まあそんなもんよね。 社員は噂が好きなんだろうか?「社長と社長補佐は社長室で何をやってるのかしら~!」「キャー‼」 ……仕事だよ。 どうやら、『社長室を私的に利用している』という噂が流れた。私的に利用というのは、社長室をラブホの一室のように扱っているという話だ。 私と颯斗の間に体の関係なんて全くないから嘘の噂だけど、またしても颯斗が怒った。そうだよね?だってさぁ、まともに仕事してるってのにそんな事言われちゃたまったもんじゃないよね。 そんなわけで、私と颯斗が二人そろって出社したりすると「お泊りよ……」などと囁かれる。ウザいなぁ。イライラする。服は着替えてるし昨日とメイクだって違うでしょ!よく見なさいよ!全く。お泊りも何も一緒に住んでるんだから何でもないことなんだけど。 颯斗には「そんな奴らをいちいち粛清してたら時間がもったいないわ」と言ったけど、逆に「くだらない噂をする人間を雇う金がもったいない」と言われた。確かにウワサ話ばかりするような人間を雇うほど会社は暇じゃない。 ついには 『くだらない噂をしている人間はその場で粛清する 舘塚颯斗』 という張り紙まで張り出した。「俺としては美
「私の婚約者である神薙美咲さんにワザとにぶつかり手を差し伸べてもらいながらも「イヤだ、ビッチがうつっちゃう」などとありもしない噂を振りまいていたな?監視カメラを検証した結果だ。このあと、社の役員会議で正式にお前、斎藤まどかの懲戒免職を決定するから覚悟しておくんだな」 会社のエントランスでそのように言い放った颯斗の効果は絶大だったようで、その後私の妙な噂は全くなくなった。……と思う。 斎藤まどかは懲戒免職となり、後ろ指を指されるように会社を去るようになった。 しかしながら、休憩中に匠と電話をしたりすると「ほら、やっぱり」みたいな声は聞こえるし、噂の信憑性などが問われる。 そんな中での舘塚産業との合併。 ヒソヒソと「社長補佐が可哀そうよ、社長がねぇ?」とか言う声が囁かれる。「美咲さん、しばらくは補佐は違う仕事をするけど構いませんか?」「うんまぁ、構わないわよ?」 そんなやり取りをしても「政略結婚だからこんなもんなのよ」とかの声が聞こえてくる。正直なところうっとおしい。******* さて、俺の仕事だが……合併直後で忙しい時に美咲さん一人に会社を任せてしまうのは心苦しいけれども、これも美咲さんの心の閊えを取り除くもの!そう自分で割り切って、俺は自分の仕事に集中する。 全く関係のないアカウントの取得。 恐らく、斎藤まどかが逆恨みしてあることないことSNSでほざいているんだろう。腹立たしい!俺を舐めるなよ?全力で探し出すからな。 あっさりと見つかった。 そうだよな、うちの会社の社員が見ることできなきゃ意味ないもんな。 SNSには本当にないことないことばかりが書かれていた。あることないことではない。仕方ないので、「合併後社長補佐に就任した舘塚颯斗です。ココに書かれていることはないことばかりですが、信じますか?信じてしまうなら、あなたに未来はありません」と書き込んでおいた。 翌日、消されていた。また同じように書いた。その日の夕方消されていた。また書いた。その翌日消されていた。俺は書いた。というようなことを1週間ほど続けたところ、そのページ自体抹消された。*******「本当に政略結婚なのか?政略であそこまでするか?」「俺にはわからないけど、俺は未来が大事だ」「本当に本人がやってることかもわからないし…」「それはあのページもだし







